どうも、スポーツ健康科学部出身のだいち(@spountant)です。
周りの人からの評判がよかったので、ジョンJ.レイティ、 リチャード・マニング著の「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」を読んだ。
たしかにこれは健康について包括的に書かれた良書で、人間のシステムは野生的な生活をするようにできているという主張は納得のいくものだった。
このページでは、「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」の概要を簡潔にまとめて紹介していく。
GO WILD 野生の体を取り戻せ!
目次
「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」の目次
「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」の目次は以下のとおり。
これだけでも人間の健康について包括的に解説されていることがわかる。
- 第一章:人類バージョン1.0 なぜ進化による設計は揺るがないのか
- 第二章:現代人を苦しめるもの 病気ではなく心身の苦痛
- 第三章:野生の食事 炭水化物と文明
- 第四章:野生の動き 動くことで脳を形成し、再形成する
- 第五章:野生の睡眠 眠ると調子がよくなるのはなぜか
- 第六章:マインドフルネス 野生の心に現れるもの
- 第七章:バイオフィリア わたしたちの最良の部分は自然の中にある
- 第八章:同族意識(トライブ) わたしたちを結び付ける分子
- 第九章:野生の脳 体が健康と幸せをつなげる仕組み
- 第十章:野生の体を取り戻せ わたしたちは何をしてきたか、あなたは何をすればいいか
なぜ人間の野生化が必要か
「GO WILD 野生の体を取り戻せ!」というタイトルのとおり、本書は人間の野生化を提案している。
その理由は地球の文明はこの5万年のあいだに大きく変化したが、人間の体と脳は5万年前と少しも変わっていないからだ。
我々の体と脳は昔のままにもかかわらず、我々を取り巻く環境は大きく変わってしまったので、現在では「病気」が蔓延している。
我々が「病気」と呼ぶものは、本当は「文明がもたらす苦しみ」と呼ぶべきものかもしれない。
その証拠に心血管疾患、高血圧、2型糖尿病、関節炎などは、昨今深刻な健康問題となっているが、先住民には見られない疾病なのだ。
逆にいうと野生を取り戻すことで、これらの疾病にならずに済むのではないかというのが、本書の主張である。
人の設計に合う食事
では5万年前のままの体にも合う食事とはどのようなものだろうか。
本書の3つのポイントを要約すると以下のようになる。
- 糖は毒
- バラエティの豊かさが大事
- トランス脂肪酸は避ける
これまでの歴史では、糖(米や小麦など)は十分な量の食物繊維と同時に摂取されていたので、その消化には時間がかかり、一日を通してゆっくりと体に吸収された。
ただ昨今の白米やコーラなどは食物繊維が取り除かれており、結果として糖だけを即座に体に取り込んでいることになる。
これがメタボリック症候群の大きな原因となっているのだ。
また米や小麦ばかりで腹を満たすのではなく、もっとたくさんの食材を取り入れるほうが狩猟民に近い食事だといえる。
昔の農耕民は、米や小麦だけで腹を満たし、栄養が偏ってしまっていたため、狩猟民よりも栄養不良だったそうだ。
さらに現代の技術によって生み出されたマーガリンなどのトランス脂肪酸は、体内に入りこむと炎症を引き起こす。
そしてそれは動脈硬化や心臓病の原因となる。
まさに現代の暮らしが病気を呼び起こしているといっても過言ではないだろう。
とにかく健康的な食事を実践してみたい場合は、津川友介著の「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」がエビデンスに基づいていてとてもおすすめできる。
もし興味があればぜひ以下の記事をご一読いただきたい。
関連記事:本当に為になる内容だった「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」のネタバレです | 津川友介
狩猟民族のように運動する
人類が長い年月生き延びてこれたのは、どの動物よりも長く走る能力があったからだといわれている。
クリストファー・マクドゥーガル著の「BORN TO RUN」では、人間は走るために生まれたという主張がされているほどだ。
このように我々の体は、運動することを前提として形成されているといえるだろう。
そして運動をすることによって以下のような効果を得られることが数々の研究で明らかにされている。
- 運動することでBDNFが放出され、脳細胞が成長する
- 認知症の予防になる
- 数多くの”文明病”を予防できる
ここでいう文明病とは、冠状動脈不全、心筋梗塞、高血圧、脳卒中、2型糖尿病など。
すべてを挙げればキリがないほどの病気を運動によって防ぐことができる。
運動が脳に与える影響については、以下の記事でかなり詳しくまとめてあるので、興味があればぜひご一読いただきたい。
ちなみに「脳を鍛えるには運動しかない!」の著者も本書と同じジョンJ.レイティ氏だ。
関連記事:「脳を鍛えるには運動しかない!」の全てをまとめた【要約/書評】
睡眠の仕方は昔と変わった
狩猟時代と現代では、眠りにかんする環境があまりにも違う。
狩猟時代は一人で寝てしまうと格好の獲物となるので、複数人で集まって寝て、見張り役を交代で勤めていたという。
わたしたちは眠っている間も周囲からの情報に気を配り、安全かどうかを判断している。
我々は眠っている間も周囲に気を配っており、ほかの人の会話や動き、焚き木が燃える音など、かすかな音が安全を知らせる信号となっているのだ。
「ほかの人が脅威となるものがないか見張ってくれている」という安心感を無意識のうちに受信し、そうして最も深い眠りに入っていくことができる。
昔のようにLEDライトを遮断するのも効果的な方法だが、かすかな音を録音でもいいので流す、ほかの人・動物と一緒に寝るなどを実践してみれば、以前にも増して熟睡できるかもしれない。
睡眠にかんして深く知りたいなら、ショーン・スティーブンソン著の「SLEEP」がおすすめなので、興味があれば以下の記事をご一読いただきたい。
関連記事:「SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術」を読んで取るべきアクションと感想をまとめた
マインドフルネスは変化に着目する力
ハーバード大学の心理学教授エレン・ランガーは、初めて”マインドフルネス“という言葉を用いたことで知られる。
彼女はそれを狩猟民族の精神状態を表すこととして使用した。
そしてエレン・ランガーが用いたマインドフルネスの定義は、「気づき」に近い。
言い換えると「新しい変化に着目する」ことがマインドフルネスだといえるだろう。
進化が狩猟採集民に与えた生き残るための方策も「新しい変化に着目すること」だった。
瞑想などによってマインドフルな状態を強化できれば、「新しい変化に着目する」能力もパワーアップするはずだ。
バイオフィリアがなくなっている現代
生物や自然への愛着をバイオフィリアと呼ぶ。
バイオフィリアは人間に備えられた性質であると考えられていて、自然への愛着をもとにした行動には以下のような効果がある。
- さまざまな微生物に触れることで、免疫系を鍛える
- 日光によって体内でビタミンDが生成される
- 自然を目にすることで、脳から幸せホルモン”セロトニン”が生成される
- 自然の景色は”共感”に重要な脳の部位を活性化させる
我々の体はコンクリートに囲まれて生きるのではなく、自然のなかで生きるように設計されているのだ。
完璧である必要はない
食事、運動、睡眠、思考、生き方。
これらはすべてつながっていて、これがすべて健康と幸福にかかわっている。
たとえば、うつ病は精神だけの状態ではなく、脳だけの問題でもない。運動習慣の有無や、野菜やタンパク質の摂り方に原因があるかもしれないのだ。
だからどれか一つではなく、すべてを整えていく必要があって、逆に一つが整うと、ほかの自然と整っていく可能性が高い。
著者は「運動もしくは食事から野生化を始めてみるといい」と提案している。
そして上記で紹介した野生化を完璧に実行するのではなく、たまにははめを外したほうがいいとのことだ。
たまには夜更かししてもいい。たまにならコーラを飲んでもいい。
こうした変化を加えていくことで、将来のストレスを乗り越えるための予防接種となる。
ちなみに本書はかなり分量が多かったが、以下の記事で紹介した「kindle散歩」で読み進めると、3~4日でサクッと読み終えることができた。
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